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東京地方裁判所 昭和49年(むのイ)234号 決定 1974年4月27日

申立人 槇枝元文 外一名

主文

本件準抗告の申立を棄却する。

理由

一  本件準抗告の申立の趣旨は、

「昭和四九年四月一一日被疑者両名に対する地方公務員法違反被疑事件につき東京都板橋区加賀二丁目一九番一号板橋区立加賀中学校において警視庁板橋警察署司法警察員警部補千葉浩がなした押収処分を取消す。」

との裁判を求めるというのであり、その理由の要旨は、

(1)本件押収処分の対象となつた板教組ニユース一枚およびビラ一枚は本件捜索差押許可状に記載された捜索すべき場所たる板橋区立加賀中学校職員室における樋口保次の机からではなく、樋口保次の机の近くにあつた屑籠の中から拾い出したものであつて、捜索差押許可状に指定された捜索場所以外から押収したものである。したがつて右押収処分は刑訴法二一八条、二一九条に違反する。

(2)かりにしからずとするも、右屑籠は元あつた位置から司法警察員警部補千葉浩において樋口保次の机の方に五〇糎ほど移動させ、いかにも当初から右机のすぐそばにあつたもののごとく装つたうえで捜索し、前記物件を押収したものである。したがつて右押収処分は刑訴法二一八条、二一九条に違反する。

というのである。

二  よつて検討するに、別紙記載のとおり、本件準抗告の申立は理由がないと認められるので、刑訴法四三二条、四二六条一項により主文のとおり決定する。

別紙

本件捜索差押許可状に記載の「東京都板橋区加賀二丁目一九番一号板橋区立加賀中学校内教員樋口保次の使用する机およびロツカー」は、捜索すべき場所を特定したものであることはいうまでもない。しかして場所の特定の意味で右にいう机とは、右机の引出しの中はもとより、机の上、机の下、机の周囲の床上、机に付属する椅子の上下およびその周囲の床上などを指すものというべきである。かかる観点からすれば、机の近くに置かれた屑籠も右机に付属して置かれていると認められる状況にあるかぎり、これに含まれるものと解するのが相当である。したがつて、本件捜索差押許可状にもとづき教員樋口保次の机の近くに置かれていた屑籠の中から板教組ニユース一枚およびビラ一枚を押収したことに違法はない。

また弁護人は、屑籠は、元あつた位置から机の方に五〇糎ほど移動させられた旨主張するが、たとえ、屑籠のもともとの位置が弁護人主張のごとくであつたとしても、なお、右机に付属して置かれていると認めうる状況にあるというを妨げないのであつて、前記の「机」として特定された場所の範囲内にあるものというべきである。しかして、右屑籠に樋口保次以外の教員が紙屑などを捨てることがあつても、本来、捜索すべき場所の特定の問題であるので、これによつて前記の判断が左右されるものではない。

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